ネット問題

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ネット上の誹謗中傷・名誉毀損への法的対応を解説。発信者情報開示請求、削除請求、損害賠償請求の手続きと費用、プロバイダ責任制限法の改正内容、著作権侵害、リベンジポルノ対策まで幅広くカバーします。

発信者情報開示請求

匿名の誹謗中傷投稿者を法的手続きで特定する制度です。

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匿名の投稿者を特定するための法的手続きです。ネット上の誹謗中傷に対する法的対応の第一歩となります。

改正プロバイダ責任制限法(2022年10月施行)により、従来2段階だった手続きが1回の裁判手続き(発信者情報開示命令事件)で完了できるようになりました。これにより手続きが大幅に迅速化されています。

従来の2段階手続き(現在も利用可能): 1. コンテンツプロバイダ(サイト管理者)に対するIPアドレス等の開示請求(仮処分) 2. 経由プロバイダ(ISP)に対する契約者情報の開示請求(本訴)

新制度(開示命令事件): 1回の申立てで、裁判所がコンテンツプロバイダとISPの両方に開示命令を発します。提供命令(プロバイダ責任制限法15条)により、コンテンツプロバイダからISPへの情報提供も命じられます。

費用の目安: 弁護士費用30〜70万円程度(事案の複雑さ、サイトの種類による)。海外事業者(Twitter/X、Meta等)の場合はやや高額になる傾向。

期間: 新制度で6ヶ月〜1年程度。従来の2段階手続きは1年〜1年半程度。

重要: ISPのアクセスログの保存期間は通常3〜6ヶ月程度です。投稿を発見したら速やかに弁護士に相談し、ログの保全を図ることが極めて重要です。

削除請求

権利侵害コンテンツの削除は通報・書面請求・仮処分などで対応します。

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権利侵害コンテンツの削除を求める方法は複数あります。状況に応じて最適な方法を選択します。

1. サイト管理者への直接請求: 利用規約やコミュニティガイドライン違反を理由に削除を求めます。多くのSNS(X/Twitter、Instagram、YouTube等)は通報機能を備えており、まずはこの方法を試みるのが簡便です。

2. 送信防止措置請求(プロバイダ責任制限法3条2項): サイト管理者に対し、テレコムサービス協会の書式に基づいて書面で削除を求める手続きです。サイト管理者は投稿者に照会し、7日以内に反論がなければ削除される仕組みです。

3. 仮処分(民事保全法23条2項): 裁判所に削除の仮処分命令を申し立てる方法です。緊急性が高い場合や、サイト管理者が任意の削除に応じない場合に有効です。申立てから1〜2ヶ月程度で決定が出ます。担保金(供託金)は10〜30万円程度。

4. 検索結果の削除: Google等の検索エンジンに対して、検索結果からの削除を求めることも可能です。最高裁平成29年1月31日決定により、プライバシーの侵害が公表の利益を上回る場合に削除が認められます。ただし、認容基準は高く設定されています。

5. Googleマップ口コミの削除: 事実に反する口コミや営業妨害に該当する口コミについて、Googleへの通報や法的手続きにより削除を求めることができます。

名誉毀損の成立要件

ネット上の名誉毀損は刑事と民事の両面から対応できます。

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インターネット上の名誉毀損は、刑事・民事の両面から対応が可能です。

刑事上の名誉毀損罪(刑法230条): 「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。ネットへの投稿は「公然」の要件を満たします。重要なのは、真実であっても成立し得る点です。法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金。親告罪(告訴が必要)。

免責事由(刑法230条の2): 以下の3要件を全て満たす場合は罰しない: (1)公共の利害に関する事実であること (2)専ら公益を図る目的であること (3)真実であることの証明(または真実と信じたことに相当の理由がある場合)。

侮辱罪(刑法231条): 事実の摘示なしに人を侮辱した場合。2022年改正で法定刑が引き上げられ、1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料となりました。木村花さんの事件を契機とした改正です。

民事上の名誉毀損(民法709条・710条): 社会的評価を低下させる表現により損害(精神的苦痛等)が発生した場合に、不法行為として損害賠償を請求できます。慰謝料の相場は個人の場合50〜100万円程度、法人の場合は50〜300万円程度です。弁護士費用も損害として一部認められることがあります(通常は認容額の10%程度)。

プライバシー侵害と個人情報の流出

個人情報の無断公開や晒し行為は損害賠償の対象になります。

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プライバシーの侵害もインターネット上で多発するトラブルです。

プライバシー権: 日本の法律に明文の規定はありませんが、判例(最判昭和44年12月24日「宴のあと事件」等)により、(1)私生活上の事実又は事実らしく受け取られるおそれがある情報、(2)一般人の感受性を基準にして公開を望まない事柄、(3)一般の人にまだ知られていない事柄 — の公表がプライバシー侵害として不法行為を構成します。

氏名・住所等の晒し行為: 本人の同意なく氏名、住所、電話番号、勤務先等の個人情報をネット上に公開する行為は、プライバシー侵害として損害賠償の対象となります。

個人情報保護法: 個人情報取扱事業者には、本人の同意なく個人データを第三者に提供することが原則として禁止されています(個人情報保護法27条)。違反した場合は行政処分(是正命令等)のほか、2022年改正で個人にも罰則が適用される場合があります。

肖像権: 本人の同意なく顔写真を公開する行為は、肖像権の侵害として損害賠償の対象です。

リベンジポルノ対策

性的画像の無断拡散は刑事罰の対象で、迅速な削除請求が可能です。

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私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法、2014年施行)により、元交際相手等の性的画像を本人の同意なく拡散する行為は刑事罰の対象です。

犯罪類型: - 公表罪(3条1項): 私事性的画像を不特定多数に提供。3年以下の懲役または50万円以下の罰金。 - 公表目的提供罪(3条2項): 公表させる目的で特定の者に提供。1年以下の懲役または30万円以下の罰金。

削除請求: プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置請求を行います。リベンジポルノに該当する場合、サイト管理者は投稿者への照会期間を経ずに迅速に削除対応できます(プロバイダ責任制限法3条2項2号)

相談窓口: 警察(#9110)、セーファーインターネット協会(SIA)の画像削除相談、法テラス(0570-078374)。SIAでは無料で国内外のサイトに対する削除申請の代行を行っています。

証拠保全: 画像のURL、スクリーンショット(日時入り)、投稿者の情報等を保存しておくことが重要です。画像が拡散する前に早期に対応することが被害拡大を防ぐ鍵です。

著作権侵害への対応

無断転載や海賊版には削除請求・損害賠償・刑事告訴で対応します。

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インターネット上での著作権侵害(無断転載、海賊版等)に対する法的対応です。

著作権侵害の要件: 他人の著作物を、著作権者の許諾なく複製(著作権法21条)、公衆送信(著作権法23条)等の方法で利用すること。ブログ記事、写真、イラスト、動画、音楽等が対象となります。

対応方法: 1. 侵害者への直接の削除・停止要求 2. プラットフォームへの通報(DMCA通知等) 3. 発信者情報開示請求による侵害者の特定 4. 損害賠償請求(著作権法114条に基づく損害額の推定規定あり) 5. 差止請求(著作権法112条) 6. 刑事告訴(著作権法119条: 10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金)

DMCA通知: Google、YouTube、X等の米国系プラットフォームでは、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づくテイクダウン通知が有効です。

引用の要件(著作権法32条1項): 公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道・批評・研究等の目的上正当な範囲内であれば引用が認められます。出典の明示が必要です(著作権法48条)

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項目条文概要
発信者情報開示命令プロバイダ責任制限法8条裁判所による発信者情報の開示命令(2022年新制度)
発信者情報開示請求プロバイダ責任制限法5条権利侵害情報の発信者情報開示請求権
送信防止措置プロバイダ責任制限法3条プロバイダの送信防止措置と損害賠償責任の制限
名誉毀損罪刑法230条公然と事実を摘示し名誉を毀損(3年以下の懲役等)
侮辱罪刑法231条2022年改正で厳罰化(1年以下の懲役等)
リベンジポルノ防止法私事性的画像記録法3条私事性的画像の非同意公表の処罰
著作権侵害著作権法119条著作権侵害の刑事罰(10年以下の懲役等)

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よくある質問

匿名の誹謗中傷でも相手を特定できますか?
はい。発信者情報開示請求により、プロバイダを通じて投稿者の氏名・住所を特定できます。2022年の法改正で手続きが1回で完了する新制度が導入され、大幅に簡素化されました。ただし、ISPのアクセスログの保存期間は通常3〜6ヶ月程度のため、投稿を発見したら速やかに弁護士に相談することが極めて重要です。
費用はどのくらいかかりますか?
弁護士費用は発信者情報開示請求で30〜50万円程度、削除の仮処分で20〜40万円程度、損害賠償請求まで含めると合計50〜100万円程度が目安です。裁判で認められた弁護士費用の一部(通常は認容額の10%程度)は相手に請求できます。海外プロバイダ(X/Twitter、Meta等)が絡む場合はやや高額になる傾向があります。
SNSの投稿を削除してもらうにはどうすればいいですか?
まずはSNSの通報機能を利用してください。多くのプラットフォームはコミュニティガイドライン違反のコンテンツを削除する仕組みがあります。通報で削除されない場合は、弁護士を通じてプロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置請求を行います。緊急性が高い場合は裁判所に削除の仮処分を申し立てることも可能です。
Googleの検索結果から自分の情報を消せますか?
一定の要件のもと可能です。最高裁平成29年1月31日決定により、プライバシーの保護が検索結果を提供する公益性を上回る場合に削除が認められます。ただし、認容基準は厳しく、単に不快な情報があるだけでは削除されません。犯罪歴等のプライバシー情報が古くなった場合に認められやすい傾向があります。Googleの「検索結果の削除リクエスト」フォームからも申請できます。
ネット上の口コミ・レビューが事実と異なる場合は?
事実に反する口コミにより営業上の損害を被った場合、名誉毀損(民法709条)や信用毀損(刑法233条)として法的対応が可能です。Googleマップの口コミはGoogleへの報告で削除される場合がありますが、対応されない場合は送信防止措置請求や仮処分を検討します。ただし、「料理がまずい」等の主観的な感想は、表現の自由の範囲内として削除が認められにくい点に注意が必要です。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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