立退きの法的要件
借地借家法による保護
賃貸人が賃借人に対して建物の明渡しを求めるには、正当の事由が必要です(借地借家法28条)。これは賃借人保護のための強行規定であり、特約で排除することはできません(借地借家法30条)。
ただし、定期借家契約(借地借家法38条)の場合は、期間満了により契約が終了し、正当事由は不要です。
正当事由の判断要素(借地借家法28条)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ①賃貸人の建物使用の必要性 | 自己使用、建替え、再開発等の必要性 |
| ②賃借人の建物使用の必要性 | 住居・営業の拠点としての必要性 |
| ③建物の賃貸借に関する従前の経過 | 契約期間の長さ、賃料の支払状況、信頼関係 |
| ④建物の利用状況 | 建物の老朽化の程度、利用形態 |
| ⑤建物の現況 | 耐震性、安全性の問題 |
| ⑥立退料の提供 | 財産上の給付(立退料)の申出 |
正当事由は総合判断であり、①②が主たる要素、③〜⑤が補完要素、⑥は不足する正当事由を補完するものです。
立退料の相場
住居の場合
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 引越費用 | 実費(15〜40万円程度) |
| 新居との賃料差額 | 差額 × 1〜3年分 |
| 精神的負担 | 数十万円 |
| 合計 | 家賃の6ヶ月〜1年分が目安 |
店舗・事業用の場合
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 移転費用 | 引越し、内装工事、設備移設等 |
| 営業補償 | 移転期間中の減収分 |
| 借家権価格 | 更地価格 × 借家権割合(30%程度)× 賃借割合 |
| 得意先喪失の損害 | 立地に依存する業種は高額に |
| 合計 | 数百万〜数千万円に及ぶことも |
立退き交渉の進め方
1. 書面による通知
賃貸借契約の更新拒絶又は解約申入れを書面で通知します。 - 更新拒絶: 期間満了の1年〜6ヶ月前まで(借地借家法26条1項) - 解約申入れ: 申入れから6ヶ月後に契約終了(借地借家法27条1項)
2. 交渉
賃借人と面談し、立退き条件(時期、立退料等)を交渉します。
3. 調停
話し合いがまとまらない場合、民事調停(民事調停法)を利用。
4. 訴訟
調停でも解決しない場合、建物明渡訴訟を提起します。
賃借人が知っておくべきこと
- 立退きを拒否する権利: 正当事由がなければ応じる義務はない
- 立退料の交渉: 提示された金額が低い場合は増額を交渉可能
- 弁護士への相談: 特に事業用物件は金額が大きくなるため専門家に相談
- 合意内容の書面化: 立退き合意書を作成し、条件を明確化
根拠条文
- 借地借家法26条(更新拒絶の通知)、27条(解約の申入れ)、28条(正当事由)
- 借地借家法30条(強行規定)、38条(定期借家)
- 民法601条(賃貸借)