フリーランス保護法 施行1年の実態|公取委の勧告10件と実務上の課題
労働問題最終更新: 2026-04-26約4分で読めます弁護士監修済

フリーランス保護法 施行1年の実態|公取委の勧告10件と実務上の課題

この記事のポイント

  • 施行から約1年5ヶ月で公取委が勧告事例を10件公表(2026年3月末時点)
  • 書面(電磁的方法含む)による取引条件の明示義務が全業種のフリーランスに適用
  • 報酬は成果物受領日から60日以内に支払わなければならない(法第4条)
  • 違反した場合の私法上の効力(契約の有効性等)は条文上不明確で今後の判例形成が注目される
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フリーランス保護法とは

フリーランス・事業者間取引適正化等法(令和5年法律第25号、以下「フリーランス保護法」)は、2024年11月1日に施行されました。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」であり、個人で業務委託を受けるフリーランス(特定受託事業者)と発注事業者との間の取引を適正化し、フリーランスの就業環境を整備することを目的としています。

従来、下請代金支払遅延等防止法(下請法)では資本金要件があり、小規模な発注者とフリーランス間の取引は規律の対象外となるケースが多くありました。フリーランス保護法は資本金要件を撤廃し、従業員を使用する事業者がフリーランスに業務委託を行うすべての取引を対象としています。

施行後の公取委の執行状況

2026年3月末時点で、公正取引委員会(公取委)はフリーランス保護法に基づく勧告事例を10件公表しています。主な違反類型は以下のとおりです。

違反類型件数典型例
書面交付義務違反(法第3条)4件口頭のみで業務内容・報酬額を伝え、書面を交付しなかった
報酬の支払遅延(法第4条)3件成果物受領後60日を超えて報酬を支払っていた
報酬の不当減額(法第5条1項2号)2件納品後に一方的に報酬額を引き下げた
契約内容の一方的変更1件フリーランスの同意なく業務範囲を拡大した

これらの勧告事例は、同法の実効性を示すとともに、発注事業者側のコンプライアンス体制の不備を浮き彫りにしています。

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主要な義務の内容

1. 書面交付義務(法第3条)

発注事業者は、フリーランスに業務委託をする際、以下の事項を書面または電磁的方法で明示しなければなりません。

  • 業務の内容
  • 報酬の額および支払期日
  • 業務委託の期間
  • その他政令で定める事項(納品場所、検収方法等)

この義務は、契約書の締結とは別に、発注時に速やかに交付することが求められます。メール・チャット等の電磁的方法による交付も認められますが、フリーランス側が書面での交付を求めた場合は書面で対応する必要があります。

2. 報酬の60日以内支払義務(法第4条)

発注事業者は、フリーランスから成果物を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払わなければなりません。これは下請法の規律と同趣旨ですが、適用対象が大幅に拡大されている点が重要です。

3. 禁止行為(法第5条)

従業員を使用する事業者が政令で定める期間以上の業務委託を行う場合、以下の行為が禁止されます。

  • 成果物の受領拒否
  • 報酬の不当減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益提供要請
  • 契約内容の一方的変更・やり直し

4. ハラスメント防止体制の整備義務(法第14条)

発注事業者は、フリーランスに対するセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントの防止のために必要な体制を整備しなければなりません。具体的には、相談窓口の設置、研修の実施、事後対応の方針策定等が求められます。

これは雇用関係にないフリーランスにまでハラスメント防止義務を拡大した画期的な規定であり、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の規律を業務委託関係にも及ぼすものです。

実務上の課題

私法上の効力の不明確さ

フリーランス保護法は行政法規としての性質が強く、違反に対しては公取委・厚労大臣による勧告・命令・公表等の行政処分が予定されています(法第8条〜第12条)。しかし、違反した契約条項の私法上の効力(民法上の無効・取消し等)については条文上明確な規定がありません。

たとえば、60日を超える支払期日を定めた契約条項が民法90条(公序良俗違反)により無効となるのか、あるいは法第4条に基づき60日に短縮されるのかについては、今後の裁判例の蓄積を待つ必要があります。

下請法との適用関係

下請法と本法の適用が重複するケースでは、両法が併存適用されます。ただし、下請法の方が報酬減額の禁止など一部の規律がより厳格であるため、実務上は下請法の要件を満たすかどうかの判断が依然として重要です。

「従業員を使用する」の解釈

法第5条の禁止行為規定は、「従業員を使用する」事業者にのみ適用されます。この「従業員」にはパート・アルバイトも含まれますが、フリーランスのみに発注する個人事業主は禁止行為規定の適用対象外となる点に注意が必要です(ただし、書面交付義務・報酬支払義務は適用されます)。

今後の見通し

施行から1年を超え、公取委の勧告事例が蓄積されることで、法の解釈・運用がより明確になっていくことが期待されます。特に以下の点が注目されます。

  • 私法上の効力に関する裁判例の登場
  • 公取委によるガイドライン改定の可能性
  • 業界別の自主的な取引適正化の取組み(標準契約書の策定等)
  • 2027年の施行状況の見直し(附則に基づく検討)

フリーランスとして業務を行う方、およびフリーランスに業務を委託する事業者は、最新の勧告事例を参照しつつ、契約書の見直し・社内体制の整備を進めることが重要です。

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*法律のミカタ編集部 | 2026年4月26日公開*

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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