労働問題の全記事を見る最終更新: 2026-03-30約3分で読めます弁護士監修済

フリーランス保護新法|2024年施行の主要規制と実務対応

この記事のポイント

  • 2024年11月施行のフリーランス保護法は、従業員を使用しない個人事業主を保護対象とする
  • 発注者は取引条件を書面・電磁的方法で明示する義務があり、60日以内の報酬支払いが義務付けられた
  • ハラスメント防止措置・育児介護配慮・中途解除60日前通知など、従来の下請法にない保護が追加された
この記事をシェア

フリーランス保護新法とは

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が2024年11月1日に施行されました。

これまでフリーランスは下請法や労働法の保護を受けにくい立場にありましたが、本法律によりフリーランスと発注者(委託事業者)間の取引に明確なルールが設けられました。

対象となる「特定受託事業者」

法律の保護対象は特定受託事業者です。

定義: 従業員を使用しない個人事業主または法人

つまり、1人でフリーランス活動をしている方が主な対象です。法人であっても役員のみで従業員を雇用していなければ対象となります。

この記事に関連する無料ツール

残業代計算ツール

この記事の分野に関連する無料シミュレーターをお試しください。

無料で試す →

発注者の義務1: 書面交付義務(法3条・4条)

基本義務(法3条)

業務委託を行う場合、発注者は取引条件を書面または電磁的方法(メール等)で明示しなければなりません。

明示事項(法3条1項各号): - 業務の内容 - 報酬の額 - 支払期日 - 発注者の名称・住所 - 業務の提供場所・方法

継続的業務委託(法4条)

1ヶ月以上継続する業務委託(取引額20万円以上の場合)では、書面交付に加え、以下の内容も明示が必要です。 - 契約期間 - 解除・更新の条件

発注者の義務2: 報酬の支払期日(法4条の2)

フリーランスへの報酬は、給付を受けた日から60日以内の所定支払日に支払わなければなりません。

これにより、長期にわたる支払い遅延が禁止されます。

禁止行為(法5条)

継続的業務委託(1ヶ月超)において、発注者は以下の行為が禁止されます。

禁止行為内容
受領拒否正当な理由なく給付を受け取らない
報酬減額合意なく報酬を減らす
返品正当な理由なく給付物を返品
買いたたき通常より著しく低い報酬額に定める
購入・利用強制不要な物品・サービスの購入を強制
不当な経済上の利益の提供要請協賛金等の不当な提供要請
不当な給付内容の変更・やり直し費用を負担しない一方的な変更

これらは下請法の禁止事項と類似していますが、下請法の適用がない資本金規模の取引にも適用されます。

発注者の義務3: ハラスメント防止措置(法14条)

発注者は、フリーランスからのハラスメント(セクハラ・パワハラ・妊娠・出産等に関するハラスメント)の相談に応じる体制整備が義務付けられました。

対応措置の例: - 相談窓口の設置 - 相談対応担当者の選任 - フリーランスへの周知

発注者の義務4: 育児介護への配慮(法13条)

フリーランスが育児・介護を理由に申し出た場合、発注者は業務内容・条件の調整について配慮しなければなりません(努力義務)。

契約解除・不更新の予告(法16条)

継続的業務委託(6ヶ月以上)を中途解除または更新しない場合、発注者は原則として30日前(中途解除は60日前)までに予告しなければなりません。

違反した場合の制裁

行為制裁
書面交付義務違反主務大臣による指導・勧告、従わない場合は公表・命令・罰則
禁止行為違反同上
ハラスメント防止措置不備指導・助言・勧告

フリーランス側が取るべき対応

  1. 契約内容の書面確認: 発注者が書面を交付しない場合は要求できます
  2. 報酬不払いの記録: 支払期日・未払い状況を記録
  3. ハラスメントの相談: 発注者の相談窓口または都道府県労働局への相談
  4. 弁護士への相談: 禁止行為があった場合は法的措置を検討

まとめ

フリーランス保護法は、従来の下請法では保護されなかったフリーランス取引に包括的なルールを導入しました。発注者企業は書面交付・支払期日・ハラスメント防止措置の整備が急務です。フリーランス側は権利を理解し、書面確保と記録保存を徹底することが重要です。

この記事をシェア
※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

関連記事

残業代の請求・計算方法を完全解説|未払い残業代の計算式・時効・証拠の集め方

未払い残業代の請求と計算方法を完全解説。労働基準法37条に基づく計算式、時効(3年)、必要な証拠、請求の手順、付加金まで弁護士が説明します。

不当解雇されたら?|対処法・解雇の有効性判断基準を解説

不当解雇への対処法を解説。解雇権濫用法理(労働契約法16条)に基づく解雇の有効性判断基準、整理解雇の4要件、復職と金銭解決の選択肢を説明します。

パワハラの定義と対処法|6類型と証拠の集め方

パワーハラスメントの法的定義(労働施策総合推進法30条の2)と6類型を解説。証拠の集め方、社内相談窓口の利用、労基署への相談、損害賠償請求の方法を説明します。

退職代行の法的整理|違法?弁護士との違い・リスクを解説

退職代行サービスの法的位置づけを解説。民間業者・労働組合型・弁護士型の違い、非弁行為(弁護士法72条)との境界線、利用時の注意点を説明します。

パワハラ・セクハラの証拠収集ガイド|録音・メール・日記の活用法

パワハラ・セクハラの証拠収集方法を実践的に解説。秘密録音の適法性、メール・チャットの保存方法、ハラスメント日記の書き方、医療記録の取得方法を説明します。

育児休業制度の基礎知識|取得条件・期間・給付金を解説

育児休業制度の取得条件、期間、育児休業給付金の計算方法、2022年改正(産後パパ育休)を解説。男性の育休取得促進策、不利益取扱いの禁止についても説明します。

関連するQ&A

関連する法律用語

おすすめの関連記事

労働問題

退職代行の法的整理|違法?弁護士との違い・リスクを解説

退職代行サービスの法的位置づけを解説。民間業者・労働組合型・弁護士型の違い、非弁行為(弁護士法72条)との境界線、利用時の注意点を説明します。

記事を読む
労働問題

パワハラ・セクハラの証拠収集ガイド|録音・メール・日記の活用法

パワハラ・セクハラの証拠収集方法を実践的に解説。秘密録音の適法性、メール・チャットの保存方法、ハラスメント日記の書き方、医療記録の取得方法を説明します。

記事を読む
労働問題

育児休業制度の基礎知識|取得条件・期間・給付金を解説

育児休業制度の取得条件、期間、育児休業給付金の計算方法、2022年改正(産後パパ育休)を解説。男性の育休取得促進策、不利益取扱いの禁止についても説明します。

記事を読む
労働問題

有給休暇の基礎知識|付与日数・取得義務・退職時の消化

年次有給休暇の付与条件・日数・時季指定義務(年5日)・退職時の消化について解説。パート・アルバイトの有給取得、使用者の時季変更権の限界についても説明します。

記事を読む
労働問題

労災認定の基準|業務災害・通勤災害の要件と申請手続き

労災保険の認定基準を解説。業務災害・通勤災害の要件、過労死ライン(月80時間残業)、精神障害の労災認定基準、申請手続きと不支給決定への不服申立てを説明します。

記事を読む
労働問題

テレワークの労務管理|在宅勤務の労働時間・安全配慮義務

テレワーク(在宅勤務)における労務管理の法的ポイントを解説。労働時間の把握義務、事業場外みなし労働時間制の適用要件、通信費・光熱費の負担、安全配慮義務について説明します。

記事を読む
弁護士監修記事

法律の悩み、まずは専門家に相談を

本記事の情報は一般的な解説です。個別の事情によって結論は変わります。お住まいの地域の弁護士会へ早めにご相談ください。

日弁連 法律相談ガイド