特定の相続人に財産を渡さない方法
1. 相続人の廃除(民法892条)
被相続人に対する虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合、家庭裁判所に申し立てて相続人の地位を剥奪する制度です。
#### 廃除の方法 - 生前廃除: 被相続人が生前に家庭裁判所に申立て - 遺言廃除(法893条): 遺言で廃除の意思を表示し、遺言執行者が申立て
#### 廃除が認められる要件 裁判所は厳格に判断し、認められるケースは多くありません。 - 長期にわたるDV・暴力 - 被相続人の財産の浪費・窃取 - 犯罪行為による家族の名誉毀損 - 被相続人の療養看護の拒否(著しい場合)
2. 遺言による指定
「Aにすべての財産を相続させる」という遺言を作成することで、特定の相続人の取得分をゼロにすることは可能です。ただし遺留分の制約を受けます。
3. 相続欠格(民法891条)
以下に該当する場合、法律上当然に相続権を失います(裁判所の手続不要)。 - 被相続人を殺害又は殺害しようとした - 被相続人の殺害を知って告発・告訴しなかった - 遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した
遺留分の壁
遺留分とは(民法1042条)
兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の相続分です。
遺留分の割合
- 配偶者・子: 法定相続分の1/2
- 直系尊属のみ: 法定相続分の1/3
- 兄弟姉妹: 遺留分なし
遺留分侵害額請求(民法1046条)
遺留分を侵害された相続人は、受遺者・受贈者に対して金銭の支払いを請求できます(2019年改正で金銭債権に一元化)。
#### 請求期限 - 相続開始及び遺留分侵害を知った時から1年 - 相続開始から10年(客観的期間)
実務上のポイント
- 兄弟姉妹には遺留分がない: 兄弟姉妹に相続させたくない場合は遺言で解決可能
- 廃除は認められにくい: 単なる不仲や疎遠では不十分
- 生前贈与の活用: 生前に財産を移転(ただし特別受益として持戻しの可能性)
- 家族信託の検討: 信託を活用した財産承継
根拠条文
- 民法891条(相続欠格)、892条(廃除)、893条(遺言廃除)
- 民法1042条(遺留分の割合)、1046条(遺留分侵害額請求)