相続の全記事を見る最終更新: 2026-03-13

相続放棄の手続きと期限|3ヶ月を過ぎた場合の対処法

この記事のポイント

  • 3ヶ月の期限を過ぎても事情次第で放棄が認められる場合がある
  • 遺産を使うと法定単純承認となり放棄できなくなる
  • 限定承認はプラス財産の範囲で債務を引き継ぐ方法
  • 借金の存在を後から知った場合は起算点がずれる

相続放棄の基本

相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。プラスの財産(預貯金、不動産等)もマイナスの財産(借金、保証債務等)も一切引き継ぎません。

期限: 熟慮期間(3ヶ月)

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません(民法915条1項)

「知った時」とは

  • 原則: 被相続人の死亡を知った時
  • 例外: 先順位の相続人が放棄したことにより自分が相続人になった場合は、その事実を知った時から起算

3ヶ月に間に合わない場合

#### 1. 期間伸長の申立て(民法915条1項但書) 3ヶ月の期限内に、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることができます。相続財産の調査に時間がかかる場合等に認められます。費用は収入印紙800円と郵便切手のみ。

#### 2. 期限経過後の放棄が認められる場合 判例(最判昭和59年4月27日)により、以下の要件を満たす場合、3ヶ月経過後でも相続放棄が認められる可能性があります: - 3ヶ月以内に放棄しなかったのが、相続財産が全くないと信じたためであること - そのように信じたことに相当の理由があること - 相続債務の存在を知った時から3ヶ月以内に申述すること

法定単純承認(民法921条)

以下の行為をすると、相続を承認したものとみなされ、放棄ができなくなります

1号: 相続財産の処分

  • 被相続人の預貯金を引き出して使用した
  • 被相続人の不動産を売却した
  • 被相続人の債権を取り立てた

注意: 以下は「処分」に該当しないとされています: - 葬儀費用を遺産から支出すること(社会的に相当な範囲) - 形見分け(経済的価値の低いもの) - 遺品の整理(保存行為として)

2号: 熟慮期間の経過

3ヶ月の期限を徒過した場合。

3号: 財産の隠匿・消費等

相続放棄後であっても、相続財産を隠匿・消費した場合は単純承認したものとみなされます。

限定承認との比較(民法922条)

項目相続放棄限定承認
効果一切相続しないプラス財産の範囲でマイナス財産を弁済
手続き各相続人が単独で可相続人全員で共同して申述
期限3ヶ月以内3ヶ月以内
申述先家庭裁判所家庭裁判所
メリット簡便、確実プラス財産が残る可能性
デメリットプラス財産も放棄手続きが煩雑、全員の同意必要

限定承認は、相続財産にプラスの財産がありそうだが借金の全容が不明な場合に有効な選択肢ですが、実務上は手続きの煩雑さから利用件数は少ない(年間約800件程度)です。

相続放棄後の注意点

次順位への影響

子が全員放棄すると、相続権は親(直系尊属)に移り、親も放棄すると兄弟姉妹に移ります。借金がある場合、親族全員で順次放棄する必要があります。

管理義務(民法940条)

相続放棄をしても、次順位の相続人が管理を始めるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理する義務があります(2023年改正で「現に占有している場合」に限定)。

必要書類

  • 相続放棄申述書(裁判所HPからダウンロード可)
  • 被相続人の死亡記載のある戸籍(除籍)謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 収入印紙800円
  • 連絡用の郵便切手
※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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